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デジタルビデオ符号化・復号(例:HEVC、VVC、AVS、AV1など)の分野において、「ビットストリームそのものが特許による保護の客体となり得るか」という実務上の難題が長年にわたり存在しています。発明者の核心的な貢献は、精巧な符号化アルゴリズムのロジックを設計することにあり、その最終的な直接の産物は、標準のシンタックスに準拠した特定のビットストリームです。しかしながら、従来の特許審査実務では、「ビデオビットストリーム」や「ビデオビットストリームを記憶した媒体」といった主題のクレームは、特許法第25条に規定される「知的活動の規則と方法」の範囲に属する、または特許法第2条第2項の「技術的解決策」の定義を満たさないとして、拒絶されるのが通例でした。その根拠は、ビットストリームを「単なる情報内容」または「データ符号化フォーマット」とみなし、その本質は技術的手段ではなく情報の表現であるという点にあります。
2025年4月30日、国家知識産権局はウェブサイト上で『特許審査ガイドライン』改正草案(意見募集稿)を公開し、2025年11月10日に国家知識産権局第84号局令として正式に公布され、2026年1月1日より施行されました。今回の改正では、『特許審査ガイドライン』第二部第九章に第7節が新設され、ビットストリームを含む発明特許出願の審査規定が専門に定められました。この中で、デジタルビデオ符号化・復号技術分野において、ビットストリームを生成する特定のビデオ符号化・復号方法が技術的解決策を構成する場合、その方法によって限定されるビットストリームの記憶媒体、記憶方法、伝送方法などは特許保護の客体となり得ることが明確にされました。
今回の『特許審査ガイドライン』におけるビットストリームを含む発明に関する審査規定の改正は、孤立したテキスト調整ではなく、中国の知的財産権制度がデジタル経済とストリーミング技術の発展トレンドに適応し、国際的な審査実務と歩調を合わせるための重要な一歩です。この改正内容は、ビデオ符号化・復号分野におけるビットストリーム関連クレームの権利化に直接的な審査根拠を提供するものです。この改正を通じて、中国はビデオ符号化・復号ビットストリームを保護客体とするために満たすべき要件を明確にしました。これは、中国特許制度における情報通信技術分野の保護水準が、国際的な最高水準に達したことを示しています。国際出願人にとって、この変更は、中国においてビデオ符号化・復号分野の全チェーン保護(エンコーダーからビットストリーム、そして媒体に至る)の法的障壁を取り除くものです。具体的には、従来は特許権者(または出願人)は「符号化方法」または「復号化方法」しか主張できませんでした。しかし、グローバルな分業体制の下では、符号化側はチップ設計会社にあり、流通側(例えばCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)や物理ディスクなど)こそが侵害の多発地帯です。ビットストリームという産物そのものを保護しなければ、特許権者は当該ビットストリームを含むディスクを販売したり、その特定フォーマットのストリーミングサービスを提供したりする主体を直接訴えることはできません。今回の改正は、「アルゴリズム発明」から「産物保護」への救済経路を開くことを目的としています。
2025年4月30日の改正草案公表以来、筆者は日常的な国際特許出願、特にビットストリーム保護に関わる案件の処理において実務経験を積み重ね、いくつかの実務的戦略をまとめましたので、以下にご紹介します。出願人や同業者の皆様の参考になれば幸いです。不十分な点がありましたら、ご教示いただければ幸いです。
1. 最初の出願書類の作成提案
特許出願の作成段階では、特定の方法が記憶または伝送リソースにもたらす最適化効果(帯域幅削減率、記憶容量削減、復号遅延低減、CPUリソース使用率やエネルギー消費の改善など)について、明細書の中で可能な限り明確かつ定量的に説明し、ビットストリーム構造がもたらす有益な技術的効果を具体的に指摘することをお勧めします。もし元の明細書でこれらの最適化効果が十分に開示されていないと、後からの修正段階で「開示不十分」と疑われる可能性があります。可能であれば、既存の標準や一般的な方法と比較した実験データを提供し、「技術的効果」の主張を強力に裏付けることを推奨します。また、ソフトウェア、ハードウェアアクセラレータ、ネットワークプロトコルスタック実装など、様々な実装方式とその選択可能なバリエーションを詳細に記述し、保護範囲を拡大し、設計回避のリスクを低減するようにしてください。明細書には、例示的なビットストリームシンタックスの記述(例えば、具体的で限定的なシンタックス要素とその順序)を含め、それらがどのように復号側の効率を向上させるかを明確に説明する必要があります。まとめると、各国での補正に備えて、原明細書およびクレームにおいて、技術的裏付けとして十分な基盤を確保しておくことを提案します。
2. クレームの作成構成提案
メイン独立クレームグループA(広範な技術的表現): 「ビットストリームを生成するための特定のビデオ符号化・復号方法」を独立方法クレームとし、フレーム分割、予測方式、変換/量子化パラメータ、エントロピー符号化プロセス、特定シンタックス要素の生成順序など、重要なステップを限定します。
独立クレームグループB(システム/デバイス): エンコーダ/デコーダ装置のアーキテクチャ、モジュール分割、キャッシュ/バッファ管理、ネットワークインターフェース、ビットストリームに関連する信号処理ユニットを含め、ハードウェアまたはソフトウェアの実装詳細を明示します。
独立クレームグループC(コンピュータ読み取り可能な記憶媒体、特定の符号化・復号方法によって限定されるビットストリームの記憶方法または伝送方法): コンピュータ読み取り可能な記憶媒体については、「命令を記憶しており、プロセッサによって実行されると、前記特定の符号化方法を実行するように装置を構成する」という表現を記載し、「純粋な情報」という表現を避け、「非一時的」「実行可能命令」を強調します。
従属クレーム: ビットストリームシンタックス、ヘッダフィールド、NALユニット構造、タイムスタンプ処理、エラー訂正または冗長戦略、カプセル化方式(特定のカプセル化フォーマット、フラグメント化/再構成方法)、具体的なパラメータ範囲などの特徴を順次限定します。
3. 中国特許実務における対応提案
出願が最初の出願に基づいて中国に進入する場合、クレームに「ビットストリーム」や「ビデオビットストリームを記憶する媒体」などの保護主題が含まれているときは、まず改正された『特許審査ガイドライン』の規定に基づいてクレームを補正し、関連する保護内容を可能な限り維持することを検討してください。または、審査意見通知書への応答時に、クレームに「ビットストリーム」や「ビデオビットストリームを記憶する媒体」などの表現があり、それが特許法第25条に規定される特許を受けられない客体や、同法第2条第2項の「技術的解決策」の定義に該当しないと判断された場合には、まず改正された『特許審査ガイドライン』の規定に基づいてクレームを補正し、関連する保護内容を可能な限り維持することを推奨します。決して直接削除しないでください。
具体的な補正提案は以下の通りです。
1)「ビットストリーム」を「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、請求項Xに記載の方法を用いて生成されたビットストリームを記憶するためのもの」に補正する。 または 「ビットストリーム」を「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、請求項Xに記載のビデオ復号方法により復号されるために必要なビットストリームを記憶したもの」に補正する。
利点: 「プログラム」を中間媒体とすることを回避し、「方法によって限定されたビットストリーム」を直接保護する。
欠点: 表現が不明瞭であり、通常の「コンピュータプログラム+コンピュータ/プロセッサによって実行されたとき」という作成慣行に合致しないと審査官に判断される可能性がある。
2)「ビットストリーム」を「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、コンピュータプログラムとビットストリームを記憶し、前記コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項Xに記載の方法を実行させて、前記ビットストリームを生成させるためのもの」に補正する。そして請求項Xは符号化方法であること。
利点: 通過率が高く、通常の「コンピュータプログラム+コンピュータ/プロセッサによって実行されたとき」という作成慣行に合致する。実務上、この作成方式は一般的に審査官に受け入れられている。
欠点: 「プログラム」を中間媒体としているため、「方法によって限定されたビットストリーム」を直接保護することはできない。
3)「ビットストリーム」を「ビットストリームを記憶する方法であって、デジタル記憶媒体上に前記ビットストリームを記憶することを含み、前記ビットストリームはビデオ符号化方法によって生成され、前記ビデオ符号化方法は、……を含む」に補正する。
利点: 「方法によって限定されたビットストリームの記憶方法」へ保護を拡張する。
4)「ビットストリーム」を「ビットストリームを伝送する方法であって、前記ビットストリームを伝送することを含み、前記ビットストリームは請求項Xに記載の方法によって生成されることを特徴とする……」に補正する。
利点: 「方法によって限定されたビットストリームの伝送方法」へ保護を拡張する。
5)「データストリーム」を「データストリームを処理する方法であって、媒体コンテンツが前記データストリーム内に符号化され、前記データストリームは請求項Xに記載の方法によって生成される……」に補正する。
実務上、特定の符号化・復号方法またはコーデック方式が権利化可能であれば、対応する「データストリームを処理する方法」も通常権利化が認められる。
4. 「ビットストリーム」と「データストリーム」の用語の区別
特に注意すべき点として、「ビットストリーム」と「データストリーム」は日常の技術文脉では混用されることがありますが、特許法の文脈、とりわけ特許法第2条第2項の「保護客体」の審査においては、両者は厳密に区別される必要があります。通常、「ビットストリーム」は物理層、下位のバイナリシーケンスを指し、一方「データストリーム」は論理層であり、プロトコルやカプセル化を含みます。両者の主な違いは技術的側面(粒度、プロトコル関連性など)にあり、「データストリームはビットストリームを含む、またはカプセル化するものである」と簡潔にまとめることができます。
中国の審査意見応答において、保護客体に該当しないという拒絶理由に遭遇した場合、優先的に「データストリーム」を「特定の符号化・復号方法によって生成されたビットストリームを含むデータストリーム」に限定または明確化し、改正された『特許審査ガイドライン』の関連規定に従って詳細に調整することが、権利化への経路を開くための重要な戦略となります。
5. 結び
以上のように、改正された『特許審査ガイドライン』の関連規定に従い、上記の補正例と実務的ノウハウを踏まえることで、国際出願人は優先権またはPCT出願に基づいて中国に進入する出願書類の補正、あるいはその後の審査意見応答や分割出願の際に、ビットストリーム関連の主題の保護範囲を方法から流通段階の媒体やデータストリームにまで拡張することができ、これにより特許ポートフォリオの商業的価値と権利行使の実効性を著しく向上させることができます。
The content of this article is intended to provide a general guide to the subject matter. Specialist advice should be sought about your specific circumstances.
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