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1 October 2025

2024年専利復審・無効審判の典型事例判決要点集(二)

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Kangxin

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【事件番号】1F516906 チップ式熱交換器及びインバーターエアコン...
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Ⅴ.進歩性

(Ⅱ)技術的示唆の判断

25. 区別される技術的特徴の引用文献における役割の認定

【事件番号】1F516906 チップ式熱交換器及びインバーターエアコン

【判決の要点】先行技術が技術的示唆を与えているかどうかを判断する際には、引用文献に前記区別される技術的特徴と同一または類似している技術手段が開示されているかどうかを検討するだけでなく、当業者の立場に立ち、当該引用文献に記載された全体的な作業プロセスに基づいて、その技術手段が果たす役割または解決する技術的課題が同一であるかどうかの分析も行うべきである。

26. 異なる応用分野の先行技術は組み合わせの技術的示唆を与えることができる

【事件番号】4W116379 吸着型自走装置

【判決の要点】進歩性の評価においては、発明が実際に解決する技術的課題を、最も近い先行技術に基づいて再判断する必要がある。この技術的課題に導かれて、当業者は、類似または関連する技術分野において同一の技術的課題を解決するための技術的手段を模索する動機を持つ。これは、当該専利の適用分野および最も近い先行技術に限定されるわけではない。類似または関連する技術分野における先行技術文献において、同一の技術的課題を解決するために同一の技術的手段を用いることができることが開示されている場合、当該先行技術は、当業者にとって、先行技術文献と最も近い先行技術とを組み合わせて、請求項によって保護されるべき技術的解決策を得るための技術的示唆を提供する。

27. 工程方法のステップ順序が技術的示唆の判断に与える影響

【事件番号】4W116776 仮内型の一種の加工工程

【判決の要点】方法の請求項における工程ステップ間の順序は、各ステップに対応する構成要素の構造によって制約される可能性がある。先行技術が係争専利の請求項と基本的に同一のステップを開示しているが、ステップの順序が異なる場合、進歩性の判断においては、各構成要素構造が工程ステップに与える影響を考慮すべきである。係争専利と先行技術の構成要素構造上の差異により各工程ステップの順序を入れ替えられない場合、当該先行技術が技術的示唆を与えたとは認められない。

28. 明細書の技術的効果が「3ステップ法」の結論に与える影響

【事件番号】4W116583メカニカル機電式リアディレイラー

【判決の要点】3ステップ法」によって先行技術に結合された技術的示唆が存在すると認定できる場合、発明の技術案は当業者にとって自明である。たとえ係争専利が他の技術効果を記載していたとしても、その効果は当業者が先行技術を結合して得られた技術案において確定できるものである限り、進歩性判断の結論に影響を及ぼさない。

29. 技術的示唆判断におけるパラメータ特徴の考慮

【事件番号】4W117515 結子絹の製造方法と渦流ノズル

【判決の要点】特定のパラメータ特徴を包含する請求項について、最も近い先行技術が同一の構成部品と類似のパラメータ設定を有する装置を開示し、かつ係争専利が解決しようとする技術的課題を解決した場合、 両者の相違点が、当該構成要素の具体的な寸法に関する特定パラメータを専利請求の範囲が記述している点のみである場合、当該パラメータの選択について先行技術が対応する教示を与えており、かつ当該専利明細書にも当該パラメータの選択が先行技術に対して顕著に優れた技術効果をもたらすことが記載されていない場合には、当該パラメータは当業者の慣用選択に該当する。

30. 併用薬発明の技術的示唆の判断

【事件番号】1F409289 ニトロキサジン及びその類似体と化学療法及び免疫療法との癌治療における併用用途

【判決の要点】併用薬発明の進歩性判断において、二件以上の先行技術文献に組み合わせの示唆があるか否かを判断する際には、先行技術が置換の成功予測を示しているか、化学薬品と抗体医薬品の治療方法及び効果の差異、具体的な作用標的及び作用機序などの要素を総合的に考慮すべきであり、先行技術が「他の薬剤と併用可能である」と漠然と記載しているという理由だけで、明確な技術的示唆を与えていると認定してはならない。

31. 医薬用途発明の技術的示唆の判断

【事件番号】1F409289 硝酸ヒドロキシキノリン及びその類似体と化学療法及び免疫療法との癌治療における併用用途

【判決の要点】医薬用途発明について、特定の薬剤成分を対象とした先行技術文献が多数の候補適応症を漠然と列挙しているのみで、異なる適応症の発症メカニズムや治療機序が大きく異なる場合、当該文献が薬剤の上記適応症に対する治療効果を検証していない状況下では、薬剤作用機序の複雑性と適応症間の差異性を考慮すると、当業者は通常、当該先行技術文献から明確な技術的示唆を得ることができない。

32. 進歩性評価における異なるバージョンの通信規格の組み合わせ示唆の考慮

【事件番号】4W116433 キャリアアグリゲーションフィードバック方法、装置及びシステム

【判決の要点】通信技術分野の専利における進歩性評価において、請求項の技術案と最も近い先行技術との相違点の一部が他の引用文献に開示されている場合でも、当該引用文献と最も近い先行技術が異なるバージョンの通信技術標準に由来し、かつ当該相違点が異なるバージョンの標準において異なるシナリオに適用され、異なる技術的課題を解決するものである場合、当該引用文献が当該相違点を導入する技術的示唆を与えたとは認められない。

(Ⅲ)関連技術分野における発明の進歩性判断

33. 追加の実験データの審査

【事件番号】4W117821 「フルキナチニブ結晶型」事件

【判決の要点】専利権者が提出した追加の実験データが証明する効果は、元の出願書類の開示内容から導き出せるものでなければならない。追加の実験データが証明する技術効果が、明細書に明記された条件下で測定されたものである場合、あるいは具体的な試験条件が異なるものの、当該技術効果が元の出願書類に記載された効果の具体的現れである場合、その技術効果は進歩性評価の事実的根拠として用いられることができる。

34. 中薬組成物の進歩性の判断

【事件番号】4W116478 大腿骨頭壊死を治療する中薬組成物及びその製造方法

【判決の要点】中薬組成物においては、生薬の種類及び用量の調整には一定の柔軟性があるものの、既存の処方に含まれる個々の生薬や用量を任意に変更できるわけではなく、弁証論治に基づく生薬の配合法則に従う必要がある。処方の個々の生薬の組み合わせとその一般的な効能のみを知っている場合、各生薬が処方で占める位置付けや作用、あるいは処方の構造を把握できず、明確な技術的指針も欠如している状況では、当業者が証から薬への選択を実現することは困難であり、これにより得られる漢方薬組成物は自明ではない。

35. 医薬化合物の結晶形の進歩性の判断

[事件番号] 4W117821「フルキンチニブ結晶形」事件

[判断の要点] 医薬化合物の結晶形を研究し、医薬品の製造および使用の要件を満たす有利な結晶形を特定することは、この分野において一般的な動機である。結晶化溶媒や温度などの条件を変更して異なる結晶形を得ることは、この分野において日常的な技術的アプローチである。一方で、既知化合物の結晶形の発明は、医薬化学分野において強い技術的含意を有する発明の範疇に入る。一般的に、発明性は、当業者が予期しない技術的効果を生じる場合にのみ認められる。他方、結晶形を得るための技術的手段も、技術的含意の有無を判断する上で重要な要素である。技術的手段が従来的であるほど、技術的含意は強くなり、それに応じて技術的効果に対する要件も高くなる。

36. 生理学的指標によって示される医薬用途を伴う発明の進歩性の判断

【事件番号】 4W117065:転移性前立腺癌治療薬の製造におけるデガレリクスの使用

【判断の要点]】「スイス型」クレームを用いて作成された医薬用途を伴う発明については、特定の生理学的指標を用いて対象患者を特徴づけることで医薬用途がさらに精緻化され、かつ、当該疾患の病因、臨床症状、および治療効果に関する情報に基づき、当該生理学的指標が薬剤投与に関する実用的な臨床指針値を有することを当業者が十分に確認できる場合、当該生理学的指標は一般に、発明の保護範囲に実質的な影響を及ぼすとみなされる。

このタイプの発明と最も近い先行技術との違いが、生理学的パラメータを使用して対象をさらに絞り込むことにある場合、本発明は、明細書に開示された技術情報に基づいて、生理学的指標と治療効果との関連性を特定し、本発明が実際に解決する技術的課題を決定し、先行技術における薬物の一般的な治療効果と生理学的指標の意義および応用を分析することにより、本発明が技術的課題を解決できるかどうかを評価する必要がある。

37. コンピュータ支援医療技術に関する専利出願の進歩性審査

【事件番号】4W116678 コンピュータ支援歯科矯正装置の検査方法

【判決の要点】コンピュータ支援医療技術案が、既存のコンピュータ支援モデル技術を基盤とし、医学原理のみに基づいて、医療分野で通常考慮される関連要素を単純にシミュレーションパラメータとして組み込み、既存のコンピュータシミュレーション実施技術効果を超える成果を生じない場合、当該技術方案は進歩性を有しない。

38. 人工知能技術を利用した人間と機械のインタラクション技術案の進歩性判断

【事件番号】1F399901 仮想ロボットのインタラクション方法、装置、記憶媒体及び電子機器

【判決の要点】特定対象が特定の場面で示す個別的行動を模倣するためのモデル訓練について、その進歩性を評価する際には、当該特定対象、応用場面及び訓練目的が技術方案に実質的な影響を与えるか否かに注目する必要がある。先行技術が当該訓練目的に基づくコンピュータモデルや方法の改良を包含せず、かつ応用場面・模擬対象が係争専利出願と差異があり、収集訓練データ・採用訓練手段・達成目標などが全て異なる場合、先行技術は同一技術課題解決のためのコンピュータモデル訓練に関する示唆を与えていない。

39.応用シナリオ人工知能アルゴリズム専利の進歩性判断において果たす役割

【事件番号】1F397311 画像処理方法及び装置

【判決の要点】人工知能アルゴリズムを具体的なシナリオに適用する発明については、進歩性の判断においてアプリケーションシナリオとモデルアルゴリズムを一体として把握し、異なるシナリオへの転用時にモデルアルゴリズムの特徴に実質的な調整・変更がなされているかを総合的に考慮すべきである。係争専利のアルゴリズムモデルが、異なる具体的なシナリオへの適用により、訓練データ、入力データ、出力データ、モデル選択などの面で先行技術と実質的な相違を生じ、異なる技術的課題を解決している場合、当該専利の技術的解決策は進歩性を有する。

40. 光学レンズ分野におけるパラメータ関係式を含む専利請求の範囲の進歩性審査

【事件番号】4W115749 撮影用光学レンズ

【判決の要点】光学設計ソフトウェアを用いて得られた光学撮像システムについては、回帰分析による光学設計プロセスを通じてその進歩性を判断することができる。判断にあたっては、設計過程において初期構造を確定し、最適化のための制約条件としてパラメータ関係式を構築する際に創造的労力が要求されるかどうかを十分に考慮すべきである。システム内のパラメータ変化が他のパラメータ変化を引き起こす可能性のある「連動」現象については、当該「連動」が必然的に発生するかどうかはパラメータ間の物理的特性に依存すると理解すべきであり、これにより専利請求の範囲で限定されたパラメータを分類して考慮できる。制約条件として用いられる上記パラメータ関係式と「必然的な連動」関係にあるパラメータについては、最適化過程において、これらのパラメータの連動変化がパラメータ関係式を専利請求の範囲の関連限定を満たせなくする可能性があるかどうかを十分に考慮すべきである。一方、上記パラメータ関係式と「必然的な連動」関係にないパラメータについては、必要に応じて当該パラメータを「固定」し、最適化過程において変化しないことを明確にすることができる。

Ⅵ.明細書

41. 専利の先行技術における外国専利文献の引用要件

【事件番号】4W117594 「リン酸ルコテニブ」事件

【判決の要点】専利の背景技術において外国専利文献を引用する場合、引用された外国専利文献の公開日が係争専利の公開日よりも遅くない場合、たとえ『専利審査ガイドライン(2023)』施行前に提出された専利出願または当該出願に基づく専利権であっても、当該引用文献の内容は当該専利出願または専利権の公開内容の基礎として認定することができる。

42. 「十分な開示」を判断するための明細書の詳細度の要件

【事件番号】4W117305 マヨネーズ様食品

【判断のポイント】専利明細書、特に実施形態における明細書は、当業者が本発明の技術案を理解し、実施することを容易にするために、可能な限り詳細に記載されるべきである。しかし、これは必ずしも実施形態に発明のあらゆる詳細を記載しなければならないことを意味するものではない。実施形態に記載されていない技術的詳細が、当業者が常識に基づいて、または従来技術を組み合わせることによって実現可能であり、かつ、当該詳細が発明の関連する技術的課題の解決または対応する技術的効果の達成を妨げるという証拠がない場合、当該詳細の省略は不十分な開示とはならない。

43. パラメータ特徴を包含する技術案の十分な開示の判断

【事件番号】4W116759 負極シート、二次電池及び電気使用装置

【判決の要点】明細書が各パラメータ間の最終的に満たすべき関係のみを提示し、当業者が当該パラメータ関係式を満たす具体的な技術手段を実施できることを示しておらず、かつ採用されたパラメータ限定の関係式に遵守すべき理論的規則が存在しない場合、当該パラメータ関係式で限定された技術案は技術的課題を解決する技術手段を欠くため実現不可能である。

Ⅶ.請求項

(Ⅰ)請求項の理解

44. 請求項における「造語」の解釈

【事件番号】4W117583 ユーザインタフェース要素を操作するための装置、方法及びコンピュータ読み取り可能記録媒体

【判決の要点】専利権確定手続において、請求項中の用語は通常、関連技術分野において一般的に有する意味として解釈されるべきである。当該技術分野に通常の意味を持たない「造語」については、当業者の立場に立ち、請求項自体の限定に基づき、明細書中の技術的課題の解決や技術的効果に関する記述と併せて、その意味を客観的に理解すべきである。専利権付与手続きで形成された専利審査記録は、請求項の保護範囲を理解する上で参考となる。

45. 製造方法の請求項の保護範囲の理解

【事件番号】4W117474 アクリル酸の製造方法

【判決の要点】製造方法の請求項について、当業者が製造工程の設計及び工程間の連携を総合的に理解した上で、ある工程が請求項に記載された他の工程によって技術案の中に暗黙的に限定されていると判断できる場合、当該工程が請求項の文言に明記されていなくとも、その工程は請求項の一部として理解されるべきである。

(Ⅱ)独立請求項には必須の技術的特徴が記載されるべきである

46. 「必須の技術的特徴」の役割

【事件番号】4W117786 アムロジピン及びビソプロロール含有組成物

【判決の要点]】必須の技術的特徴とは、発明がその技術的課題を解決するために不可欠であり、その合計が発明の技術案を構成し、背景技術に記載されている他の技術案と区別するのに十分である技術的特徴である。独立請求項に必須の技術的特徴を含むことを要求するのは、それが定義する技術案がクレームされた技術的課題を解決できることを保証するためであり、必須の技術的特徴が実施形態に存在することや、優れた技術的効果を達成するために設計された特徴であることを要求するものではない。

出所:IPRlearn

参考:2024年専利復審・無効審判の典型事例判決要点集(一)

※本資料は康信が作成した仮訳となります。康信では情報・データ・解釈などをできる限り正確に記載するよう努力しておりますが、本資料で提供した情報などの正確性について康信が保証するものではないことを予めご了承の程宜しくお願いいたします。

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